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今日もまた雨か-


奇妙な同棲生活がはじまって2週間とちょっとが経っていた。知れば知るほど近藤勲という男は気持ちのいい男で、これほど居心地のいい場所はなく、俺もすっかりくつろいだ気分で居ついてしまっている。
けれども、困った事もある。
あれから勲はすっかり警戒して何にもさせちゃくれないのだ。
完全に打ち解けて惚けた笑顔を向けてくるくせに、抱きついたり触れたりすると、途端に警戒心を露わにして拒む。
そういうところが可愛いんだが、いかんせん溜まる。あんまり右手のお世話になり続けるのも虚しいし。
それに、俺としては、住まわせてくれたお礼に気持ちよくさせてやりたいとか思うわけだ。
あの髭面が身悶えして喘ぐ様はさぞかしクルだろうしな。

なんて、いかがわしい事を考えながら俺は窓の外に目を向けた。

雨脚は激しく、大粒の雨が窓を洗う。
暗闇に浮かぶネオンが滲む。
窓に打ち付けられた雨を見ていたら、前後不覚になるほど酔って街を徘徊した日々を思い出した。

飲んでも抱いても抱かれても体ん中に抱えているがらんどうは埋まる事が無くて、反吐が出るほどこの街を憎んだこともあった。

今はあの頃にくらべれば落ち着いている。変わらないような生活をすることもあったが、東京を憎むほどガキじゃなくなった。
まぁ、あの日は携帯をぶっ潰すほど、この汚い雨に洗われて彷徨ったわけだが・・・それも一時的なものだ。
勲に拾われてからは孤独を抱えすぎる事もない。

けれども-

ポーン

突然電子音が響いて、どこか遠くに出かけちまっていた俺はハッと顔をあげた。

0時だった。

アイツ今日も遅えな。

此処のところ勲は帰りが遅い。
疲れきった面で帰ってきて飯だけかきこんで歯も磨かずに死んだように眠る日々を繰り返していた。

俺は当然面白くない。

傘もってんのかよ。アイツ

時計を睨みつけても帰ってくるわけがないと知りながらそうせずにはいられなくて、煙草ばかり吸ってしまう。

まるで、あの日振った女みたいだな。と、自嘲して俺はイライラと今火をつけたばかりの煙草をもみ消した。



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