ほわり
あがっていく湯気の中で、機嫌よく近藤さんは気の抜けた鼻歌を歌っていた。
太い首筋も、肩も、よく鍛えられた身体も、湯船の中でゆったりとくつろいでいるさまが見て取れる。
嬉しいけれど目のやり場に困るナァ。なんて我ながら可愛らしい事を思って、チョビットだけドキドキしながら必要以上に長く頭を洗っていた。
「おおーい総悟」
不意に呼ばれて振り向く前に、
ザバァ
頭からお湯をかけられる。
「なにするんでィ」
「いやーなー。昔はよくこうして一緒に風呂にはいったナァ。とおもってさー。頭洗ってやってたんだぞ。覚えてるか?」
「そんな昔のことは忘れちまいました」
むくれたフリをしてそう言ったけど、嘘。本当は、貴方の大きな手が、撫でるように(スゲェ力で)頭を洗ってくれたあの温かさをよく覚えている。
「なんだよつれねーなァ。ほら、頭こすって」
言葉とは裏腹に優しい語調で近藤さんに促されて、俺は渋々頭を出した。少しだけ嬉しいけど複雑な気分だ。
近藤さんは何かというとすぐ俺をガキ扱いするんだから。
頭を洗い終えると近藤さんに微笑まれた。
そして一言。
「総悟お前細いナァ。こうして見るとお前もまだまだ子供だな」
この科白がいけなかった。
俺の日頃から溜まった不満に火をつけた。
いつだっていつだって人を子供扱いしやがって。
人の気も知らないで。
「よーく見てくだせェ。もうすっかり大人ってもんでさァ。特にこことか・・・」
すると近藤さんは、豪快に笑った。
「本気で言ってるんですゼィ」
「あーわかったわかった」
全然わかってない!
俺は不満の爆発するにまかせて、近藤さんに腕を伸ばして、頬を掴んだ。
「証明しやしょうか?」
近藤さんがハッとなるより早く唇を重ねて舌をさしいれた。
かき混ぜて吸って貪り食うように近藤さんを味わった。
「んんーんーんんんー!!」
苦しそうに近藤さんは呻くが、けっして放してやらない。
やがて、開かれた眼は、感じてきたのか薄くなって、色気のない叫び声に、甘い吐息が混ざりだす頃。
俺は、裸の付き合いゆえに自己主張する息子を気にした。
証明してェなァPR